あたしたちが隣の部屋のドアを開けたのは、それから随分時間がたった後のことだった。


先輩はドアにさしっぱなしになっている鍵を抜き取ると、それをあたしに渡してくれた。

そして、あたしの大きな荷物を抱えたまま部屋の奥へと進む。


部屋の間取りは、先輩の部屋と全く同じだった。


「荷物はここでいい?」

ベッドの上に、どさっとあたしの大きな荷物が置かれる。

「ありがとうございます」

あたしが頭を下げると、先輩はぽんぽんってあたしの頭を撫でてくれて。

「俺の部屋の鍵は開けとくから。何か困ったことがあったらいつでも入っておいで」

「はい……」

「もちろん、“その気”になったら、俺はいつでも大歓迎だからね」

「……先輩!」


耳元でそんなことを囁かれて、あたしが顔を赤くすると、

「冗談だよ」

先輩は笑ってそう言った。


そんな先輩の笑顔に、ついあたしまでつられて笑ってしまう。



先輩、ありがとう。
本当に、ありがとう……


「じゃあ、おやすみ」

そう言って部屋を出て行く先輩の背中を見送りながら、


あたしは心の中で何度も何度もそう呟いた。