何度も瞬きを繰り返す未央は、明らかに挙動不審。


「……」


俺も、なに大人気ないことしてんだ。

気にしてるのは、俺自身じゃん。

あーあ、マジで余裕ない。



イライラしてる気分を落ち着かせようと、髪をクシャリとすく。
「はぁー」って自然と溜息が零れた。


「……要……」


俺の溜息に反応するように、未央の不安気な声がして顔を上げた。

――……と、その時だった。



「わー! どけどけ! そこをどけー!」



突然近くで、慌てふためくケンゾーの声。

ハッとして顔を上げると、同時に乗っていたボートがグラリと揺れた。



「きゃあっ!」

「うわっ」



俺達は咄嗟にボートにしがみつく。


「……だからどけっつったのにっ。 危ないだろ」


激しい揺れになんとか耐えて、声の主を見上げた。


その先には、俺達と同じようにボートにしがみついたケンゾーとジーナの姿。

何を考えたのか、俺達のボートとケンゾー達のボートがぶつかったみたいだ。


ケンゾーは一言多いんだよ。
ケンカ売ってんの?

そっちからぶつかってきといて、『危ない』はないだろ。

言い返そうと口を開いた。




「あのなぁ……」


「未央ちゃん、大丈夫?」



……あ?