言いたくない、離れたくない・・・



「っ・・・っ・・」


無情にも零れ落ちていく、大きな雫。


社長に気づかれぬよう、視線を車窓へと移した。



「っ・・・」


あれほど今まで、我慢出来ていたのに。


夜空の下で、1人で泣き明かしたのに。



どうして、また・・・



止まってよ…、泣いたらダメなのに――





「どうして泣いているんだ?」


「っ――!」


突然の問い掛けに驚き、思わず振り向いてしまう。



頬をツーと伝う涙が、止められないままに・・・




「蘭…、どうなんだよ?」


赤信号で停車した今は、こちらを見ている社長。


その探るような視線が、涙を溢れさせていく。



本当は、助けを請いたい・・・


ブラウンの優しい瞳は、私を掴んで離さないの。




結婚なんて…、別離なんてイヤだと――