『若菜?俺、だけど。』

「……大志?」

突然かかってきたカレシからの電話に焦る。
一瞬、カワサキの顔が過ぎった気がした。浩実のせいだ、あんなこと言うから。

『何、焦ってんの?』

「別に。」

『なら、いいけど。』

大志は、無駄に勘がいい。
私に好きの気持ちがないことに、もしかしたら気づいているのかもしれない。

『今度の休み、帰ろうと思ってるんだけど。』

「うん。」

大志と私は、高校生の頃から付き合っている。大志は東京の大学に行っているから、地元に残った私とは、なかなか会えない。

『会える?』

「会えるよ。」

会いたい、と言ってくるのも大志から。私は、言わない。

『話したいことがあるんだ。』

「うん、待ってる。」


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