「……」


 ビーカーに入っている水がアルコールランプの火によってコポコポと音をたてて沸騰されてゆく。

 その様子を、叩けば埃が舞いそうなソファーに座って観察する私。



 何でこんな事に…と思いながらも何もする事がないので、ひたすら観察観察観察。


決して、化学の授業で実験をしている訳ではない。


 私が今いる場所は、化学室に隣接する第二準備室という授業ではほとんど使われない部屋。


 決して、自ら進んで来た訳ではない。




「木下さん、コーヒー飲める?」


 元はと言えばこの男のせいで…今頃家に帰っている筈だったのに…。


 私がここに来る元凶となった先程の声の主を一瞥する。

 声の主とはあの鹿島 久人。

 こちらを見ずに部屋の奥にある棚で何かをしている彼に私は「飲めるよ」と一応答えた。