カフェの一番隅の席へと腰を降ろし、窓の外を歩く人の波を見つめながら、頬杖をついた状態で居ると、自然とため息が零れてしまう。


左手首のブレスは、この一ヶ月ですっかりあたしに馴染んでしまった。



「お待たせー。」


「遅ーい!」


「ごめんってばぁ!
さぁ、早く買い物行こうよ!」


待ち合わせ相手である葵の平謝りに肩をすくめ、あたしは伝票を持って立ち上がった。


街はすでにクリスマス色に染まっていて、耳を傾けると必ず、どこかしらからジングルベルのメロディーが響いている。


ジルはあれから、本当に気紛れでお店にやって来ては、高いボトルを入れてくれる。


そしてそのままアフターついでにお持ち帰りされ、あたしは彼に抱かれるのだ。


そんな日は、決まってムカつくことがあったのだと言う。


でも、見てる限り、生きてるのが嫌になる、って感じなんじゃなかろうか。


ふと、糸が切れてしまうような、そんな感覚。


ジルの何かを諦めてしまったような冷めた瞳は、今も変わることはない。



「レナ、何か上の空じゃーん。」


「寒いんだって、誰かさんの遅刻の所為でー。」


「謝ったじゃんかぁ!
てか、それって関係なくない?」


あははっ、と笑ってしまう。


それでも正直、心ココにあらずと言った感じで、真冬の乾いた空気と同じくらい、自分の中に潤わないものが広がっている気がする。


例えばジルと食事に行ったって、たかがコンビニで買い物した程度だって、彼はあたしが財布を出すことを異常に嫌う。


でも、あたしはこれ以上お金を使って欲しくなくて、最近では会えば必ずご飯を作ってあげるようにした。


ジルの部屋にも、もちろんあたしの部屋にも、少しずつお互いの存在を示すような物が増えているけど、だからってあたし達はセフレ以上ではないのだ。


クリスマスだってきっと、あの人があたしに会いに来ることはない。