港町、ウィラ。



「―――――っ…」



息を弾ませながら、私は町中を駆ける。


人気のない裏通りを、ただひたすら。



「………!!」



遠くの方から、叫び声が聞こえた。


けど私は振り返らず、一心に走りつづけた。



夜空の月までも、私を追う。


…今、捕まったらだめ。


そう自分に言い聞かせ、疲れきった脚を必死に動かす。



「………っ、あ」


足元の小石に躓き、派手に地面に転んだ。


…靴を、履いてくればよかった。


足の裏が、焼け付くように痛い。



じわりと滲んだそれは、私の視界を揺らした。



「…何してんの?」



―――どくん。


背後から不意にかけられた声に、心臓が激しく動き出す。


震える体を抑えながら、私はゆっくりと振り返った。