ある日の夕方。
私達は、あの公園に来ている。


「どっすか?何か感じないすか?」


布袋があたりを見回しながら、隣を歩く。


「うーん、残念ながら何も」


私は首を横に振って見せると、布袋は「そっかぁー」と、うなだれるように頭を掻いた。

私の身体が光った現場なら、何か手がかりがあるかもしれないと、みんなで手分けして探索している。

私と布袋は、あのシンボルの木があるほとり。
大黒天は、西側の丘の上。
恵比寿と福禄寿は、東側の散歩コースの林。


確かに、最近になって、ほんの少しだけど、私の中で眠る何かが目覚め初めているみたいに変化を感じる。

ドクンドクンと、まるで大きな太鼓が胸のうちに響くように、痛みが全身をかけめぐる。理由はわからないけれど、きっと何か意味があるんだと、今は思うようになった。


月の雫のセンサーとか?
感知器みたいな。

きっと、石の放つ力を感じる体質になったんじゃないだろうか。

――なんて、私の勝手な解釈なんだけど。



ドクン、ドクン!!


「……ッ!!」


……ほら、胸が苦しくなりはじめた。




まただ――。


「う……!!」


次第に立っていられなくなり、私は地面に手をついた。

異変に気付いた布袋が、険しい表情を浮かべ私を覗き込む。


「おい!大丈夫かよ?俺みんなを呼んで……!!」


立ち上がろうとした布袋の手首を、思わずギュッと掴む。


「咲?」


「来る……」


私は、朦朧とした意識の中でそう呟いていた。

そして、それと同時に向こうから黒く伸びた人影が近づいて来る。


「お前は……!!」


布袋が、庇うように私の前に踏み出る。


「またお会い出来るとは、桜井咲。それと、布川大智くん……でしたかな?」


「どうしてそれを……」


「フフ、全く気付いていないようだな」


寿老人がそっと歩み寄り、月明かりがその姿を照らし出す。


見慣れた学ラン、胸に光る校章。
それは、間違いなく――


「その制服……お前も学校に!!」


「お前達を見張る為にね。私は三年、お前達の先輩だ。以後お見知り置きを」


寿老人は、からかうように、胸に手をあて軽く礼をして見せる。


「ふざけやがって……!!俺にとっちゃ、そんな事どーだって良いんすよ!!」


途端に、みるみると布袋に力が集まり、ドッと凄まじい風が巻き起こる。両手には二つの短刀、双剣が握られている。


「良いだろう」


寿老人がニヤリと笑みを浮かべると同時に、闇の力が集まり、手には紫色に妖しく光る杖が現れた。

先手をうったのは布袋だった。目にもとまらぬ速さで彼は動き出し、次の瞬間には、寿老人の背後に回っていた。


……布袋って、いつも何やるにも、やる気ゼロで、体力温存してる低燃費な神だと、思ってたけど……。


「はああああーーーッ!!」


布袋がもの凄い速さで、双剣を斬りつける。