鬼頭四郎は色町で遊んで、千鳥足で家老家の屋敷が並ぶ城下の一角へ帰ろうとしていた。
 鬼頭は裕之助と共に騎馬で馬ノ首峠まで修理を追った一人だ。

 町人の町を通り過ぎ一本道に通りかかった。明かりは鬼頭の提灯だけだ。少し小高くなった丘を越えると屋敷の家並みが見える。その丘に一本の柳が生えていた。柳に近づくとふらと侍が出てきた。

 ぎょっとして良く見ると見目麗しい若侍。夢の中で幾度と無く歓喜と悲鳴を上げさせた静音だった。
「な・・・何だ、静音か!何をしている・・・へへ、儂を待っていたのか」
 勝手な想像をして鬼頭はふらふらと近寄った。酔った鬼頭には手淫をしながら頭の中で陵辱した静音しか見えてなかった。可愛がってやろう・・・郭の女にかなり注いだが、静音はまた別だ。ゆっくりと袴を脱がし女とはまた違った喜ばし方をさせてやろう・・・

 弛んだ顔で近づいた鬼頭の袴の帯が、鋭い音で飛んできた剣先で切り解かれた!
「ひ!ひいーっ」
 武士とは思えぬ金切り声を出して尻餅を突く。