あたしの恋は、決してかなうことなんてない。

中沢さんは、結婚して、誰かのそばにいるから。

あたしの知らない、誰かのそばに。


「今日はどうだって?」

あたしは芯に聞いた。

「さあ、知らないよ」

そう言って芯は、あたしの前にグラスを差し出した。

あたしがいつも飲むお酒が入ったグラス。

――2人で話そう

あの約束から、今日で3日目。

中沢さんは、来なかった。

芯はグラス磨き。

そんな芯を見ながら、ため息。

「何?」

あたしのため息に気づいたのか、芯があたしを見た。

「別に」

あたしは目を反らした。

芯が呆れたと言うように、ため息をついたのがわかった。

それから、数分――いや、もっと経っていたのかも。

「いらっしゃい」

客がきたのか、芯が言った。

その人が、あたしの隣に座る。

「雪ちゃん」

中沢さんだった。

「あ…こんにちは」

あたしは言った。

中沢さんが微笑む。

それから芯を呼ぶと、
「いつもの」
と言って、頼んだ。