あたしは、いつにも増して、怒っていた。



だいたい、大山先輩も高遠先輩も、何かにつけて、あたしに用事を頼みすぎなんですよ!



いっつも、あたしが、言うこと聞くと思ったら、大間違いなんですからね!!



あたしだって、断る時だってあるんですからね!



「欄。こっちに来てくれ」



ほら!



また!



言ってる側から、高遠先輩が呼ぶんだから。



見てなさい!



断ってやるんだから!



何、言われても、今日はぜぇ~んぶ、断ってやる!



「何か用ですか?」

 あたしは、怒っていることを、おくびにも出さないで、高遠先輩の所へ行った。

「これ……」

 と、言って、高遠先輩は、紙を1枚あたしに差し出した。



コピー?



コピーしてこいってこと?!



なんで、あたしが?



こ、断ってやる!



「た、高遠先輩。あたし、しませんからね。あ、あたしだって忙しいんですから、こう見えても!」

「いいから、サインしてコピーしてこいって」

き、聞いちゃいねぇ。



ん?



サイン?



コピーじゃないの?



「なんです?これ」

「張り込み証明書」

「は、張り込み?」



なんで?



いっつも、簡単にきめてぇ。



断ってやるぅ。



「高遠先輩!毎回毎回、高遠先輩の好きにはさせませんよ!この前も、高遠先輩が勝手に決めて……」

 言い終わらないうちに、高遠先輩が話した。

「仁なんだけどな」

 ボソッと話す。




ドキッ。



え?



大山先輩と?!



「なぁんだぁ。残念だなぁ。欄ならやってくれると思ってたんだけどなぁ」

 高遠先輩が、わざとらしく記入用紙をヒラヒラさせ、あたしをチラミした。

「仕方ないかぁ、祥子に頼むかぁ。仕方ないよなぁ」



ウウ~。



「やりますっ!」



ショーガナイジャン!



ショーガナイジャン!!



断る理由ないじゃん!



だって……。



だって!



久しぶりに、大山先輩と、仕事できるのにぃ~。



断る理由ないじゃん!



嬉しいような、悲しいようなぁ……。



 あたしは、用紙にサインした。

「本当に大山先輩なんですよね」

 ジロリと、高遠先輩を見た。