修理は静音の寝顔を見ていた。丁度背の蝋燭の火が静音の顔だけは見れるほどに燃えている。静音の頬を指でなぞる。艶のある髪の一束を捕らえて撫でる。
 数刻の間、静音は普段とは違う妖艶な表情と姿態を見せてくれた。静音は焦がれた通り、修理を満足させる肉体を持っていた。
 修理は手桶に漬けた手拭いで静音の身体を清めた。
 静音は始め、冷たさに目を開けたが、肌を拭かれる快さに疲れ切った静音は眠りに落ちた。そのまま小袖に繰るんでも、もう目を醒まさない。静音の足を揃えて前に出させると静音は自分から丸くなった。蕾は桃色に腫れてまだ少し開いており、そこから幾度も注いだ修理の穢れが筋を引いて布団に流れる。修理は蕾の廻りをきれいに拭いてやると、新しい手拭いで蕾を押さえ、曲げた足を伸ばして寝かした。
 修理は自分の身体も立ち上がって拭き、着物掛けに掛けてあった小袖と袴を着、手甲、脚絆を着け旅支度を終えた。
 書台に向かってさらさらと文を書いた。

 しすね様
 黙って行く修理介を赦し給え
 御身ならば修行の末当流を習得候こと必定也
 無病息災を常に祈りおりし候
 お父上様に孝行差し上げ候
            修理

 安らかな寝息を立てる静音の前に、赤子の時に母から与えられたという身代わり不動尊のお札を置いた。
 静かに外に出ると既に薄明かりが丘に射していた。菅笠を被り顎に紐で括ると、修理は都に通じる峠に向かって歩き出した。