私立青涼(せいりょう)学園。


幼稚舎、初等部、中等部、高等部、大学が全てあるエスカレータ式の全校生徒数、軽く5000人を超す超マンモス学校。


だが、高い偏差値、自由な校風として学園の名は全国区でも有名である。


創設はかれこれ約60年前。


校舎もレトロなものが多く、だからといって古臭くもない伝統が残る学園である。


ここに、綺羅は7年前から通っていた。


もちろん、弟である陸も………。






 「おはよう、麻生(あそう)くん!」


ポンッと背中を軽く叩かれ、綺羅は軽く振り返る。


そして、目の前に見える人物ににっこりと微笑んだ。


「おはようございます。松方(まつかた)先輩」


「も~う! なんだか、固くない? 先輩だなんて。昨日から付き合ってるんだから、理佐子(りさこ)って呼んでよ」


ウフフ…と控えめな笑みを浮かべるすらりとした長い手足を持つ美少女。


目はきりっとした二重に、スッと通った鼻筋。


少し茶色く長い髪は前髪から真ん中で分け、波打つようにウェーブがかっていた。


スラリと歩くと、その長い髪が軽く背にかかり、周りにいる人を異性だけではなく同性さえも惹きつける。


彼女はそっと綺羅の腕に自分の手を絡めると、周りに見せつけるようににこやかに笑みを浮かべながら歩き出した。