拓巳の言っていることが良くわからなかった。

結婚?

どうして突然そんなことを言い出すの?

もしかしてあの夜の事に責任を感じているの?

「拓巳。何を…冗談言っているの?
あの夜のことに責任を感じてそんな事言っているの?」

「違う!お前が俺の前から姿を消してどれだけ捜したと思う?
心配で気が狂いそうだったんだぞ。お前がいなくなって解ったんだ。
俺はお前がいないとダメになる。
やっと気付いたんだよ、自分の気持ちに」

「…拓巳の気持ち?」

「俺、鈍感でお前を傷つけてばかりだったな。
…本当にゴメン。本当は添乗に行く前にどうしても伝えたかったんだ。
あの夜、俺は陽歌を失った寂しさからお前を抱いたわけじゃない。
親友を失ってでもお前を女として欲しいと思ったんだ。気付くのが本当に遅かったけど…。
でも俺は亜里沙を愛している。
親友としてではなく、一人の女として俺の傍にいて欲しいと思っている。
お前を抱いて初めて、自分の本当の気持ちに気付くなんて底なしのバカだよな」



これはきっと夢だと思う。



現実に拓巳がこんな事を言う筈が無いもの。