三年は、宏人が言うようにあっという間に過ぎ去った。


ただそこに、宏人がいないという事実はそのままに、

季節は規則正しく通り過ぎていった。


春には花が咲き、柔らかい陽光が空気中にぼんやりと霞をかけ、


夏には入道雲が山の上から立ち上り、蝉しぐれが緑の間から隙間なく降りそそいだ。


秋は、燃えるように色づいた木々が、どこまでも澄んだ青い空に広がりその葉を湛え、


冬は色彩のトーンを下げ、白い雪と月は夜を明るく灯した。


宏人との思い出もゆっくりと過去になり、身体の大半を占めていた悲しみも時間の流れとともに少しずつ溶けていった。


今という時間のなかで起きる出来事が、悲しみの溶け落ちた場所に新しい過去として積み重なっていった。