ごろん、と仰向けになると、緑と土のちょっと湿った匂いが鼻についた。

行ってしまった。彼は行ってしまった。

引き止めておけるなんて思わなかったけど、やっぱり行ってほしくなくて。

Tシャツから頼りなく伸びたこの腕で必死にしがみついたけれどするりと抜けてった。

青い空に雲がひとつ、浮かんでいる。

まるで彼のようだと思う。



泣きだしたあたしを困った顔で彼は見つめた。

そして、何も言わずに大きな手で頭を撫でた。

優しく、優しく、あたしの涙が止まるまで。




答えがあるのだ。あの雲の向こうに。

あの人だけの答え。あたしには見ることも、知ることもできない世界。


もっとめちゃくちゃになるかと思った。

あの人がいなくちゃ生きていけないと、思っていたあの時のあたし。

泣いて喚いて、もっと大騒ぎするかと思っていたけど、その時が来たら意外と冷静に空なんて見ている。

風の音の中に、あなたの声が聞こえる気がして。



空と雲、風と緑。