実家から出てすぐに華に連絡したが、
繋がらない為、圭輔に電話をした。

俺は圭輔に七海に会った経緯や話した
内容を伝えた。

「良かったじゃないか?離婚か?」

「良かったって、俺はそんなつもりは
 ない!」

「そーなの?結婚式しないからそんなもん
 だと思ってたけど。元々、藤岡さんが
 好きなのに華に言い包められて結婚
 したんじゃなかったの?華の言葉に
 何が不満なんだ?」

「分からない事だらけで混乱してる…」

母親の話をそのまま圭輔に言うと

「アイツ、お前には何にも話してない
 のか?」

「大学卒業と同時の結婚だから父親の会社
 で子どもが出来るまでは腰掛けOLする
 って。なのに…」

「腰掛けOLねぇ。またアイツのことだから
 何か変にぶっ飛んだ考えで、そこに
 行き着いたんだろうけど。お前、昔、
 家に来たときに藤岡さんが実家の手伝い
 を一生懸命してるところが好きって言っ
 たの覚えてるか?それってお前が
 藤岡さんの好きなところを言った極一部
 なんだけどな」

言った気がする…当時の俺は舞い
上がってた。浮かれまくってた。
そんな感じで七海の好きなところを
圭輔の前で披露したのだろう。

「華はそれを聞いてたんだよ。だから
 それを聞いた直後に親父に、自分も会社
 の手伝いがしたいって言い出した。
 でも、たかだか入学したての女子高生に
 何が出来るってバッサリ切られてね。
 そしたら今度は勉強を始めた。将来的に
 会社の力になれるようにって」

俺のたった一言で…?

「別に親の手伝いしてるからって誰でも
 いいわけじゃないのにな。アイツ20歳に
 なったときに再度親父に手伝いたいって
 言ったんだよ。親父の会社の改正案と
 今後の事業計画書を持ってな。」

はっ!?

「親父、笑ってたよ。だったらやってみろ
 って。ただし、学業も疎かにするな、
 やるなら徹底的にやれってまずは子会社
 で働かせることが認められた。
 ちなみに今はアイツがそこを任されて
 る。藤岡さんちの実家の支援は華の
 会社からだよ。親父には話を通した
 だけ。華が別で必ず利益を出す、
 それでも駄目ならって自分の通帳渡して
 押し切った。お前には親父に頼むって
 言ってたみたいだけどな。自主退職者の
 再就職先の件もおそらく華の会社
 だろう」

会社を任されるなんて並大抵の事では
ないはずだ。そんな中、七海の実家の
支援をしたというのか!?全て華1人に
背負わせていたのか!?
“七海の家は俺が守る”って
言っておきながら、俺は口先だけで
何もせず、結果的に七海を裏切って
華と結婚して。それでも七海の家が
守られたのだと自分の考えを、行動を
正当化して。
そんな結婚だったはずなのに思いの外、
華との生活が居心地が良いと感じて。
会社を仕切りながらの家事は決して
楽ではなかったはずだ。
その上、俺の時間に合わせての生活。
それなのに華は文句も言わず、
いつも俺を支えてくれていた。

俺は華の一体何を見てきたんだろう… 
俺は一体何をしていたんだろう…
先程の自分の言った言葉が頭を過る。

“今の七海の状況があるのは少なからず
あの時の影響があるんじゃないかと”

知らなかったとはいえ、言うべき言葉
ではなかった。これでは華がやって
くれたものを否定している様なものだ。
それに、なんの躊躇いもなく
“私、分からなくてどうしたらいいかな?”と言った七海の言葉は、
自分自身の努力で切り拓いてきた華に
してみれば有り得ないだろう。

なんて事を言ってしまったのだろう…
何を言っても言訳にしかならないが、
後悔ばかりが残る。

「アイツの中心は13歳のときから
 お前だよ。お前が引くぐらいの
 エピソード、いっぱいあるよ。
 聞く気があるなら話すけど?」

「いや、華から直接聞く」

「そっか。まぁ、とにかくアイツは
 思ってる以上に単純で重いってこと。
 だからってお前に気持ちがないのに、こ
 の生活続ける必要はないから。
 寧ろ、ハッキリ言ってやった方が
 お互いの為だろ」

「俺は華が好きだよ。これからもずっと
 一緒に居たい」

「それは知らなかった。アイツってお前の
 好みとはかけ離れてるだろ?昔、俺が
 アイツに“幸太の好みじゃない。幸太は、
 庇護欲をそそるような子がタイプだ”って
 言ったことがあるんだけど、アイツの中
 でその言葉がネックになってるみたいで
 さ。いつだったかアイツに“仕事が出来る
 のと出来ないのじゃどっちが庇護欲 
 そそるの?でも親の家業を頑張って
 手伝うのがいいんだよね?どうしう?”
 って聞くんだぜ。こっちは知った話じゃ
 ないっつーの。大方、仕事が出来るのは
 可愛げがなく庇護欲とはかけ離れてると
 でも思って腰掛けOLなんて言ったん
 じゃないかな。笑っちゃうだろう?」