あの人…“幸太”と出会ったのは中学に
入学したての春だっだ。兄、圭輔の友人
として我が家にやってきた。
私の家は会社を経営してたせいか、
打算的に近づいて来る人が多かった。
その為か、兄は昔から常に冷静で、
人と一定の距離を常に保っているような
人だった。そんな兄がある日、
家に友達を連れてくるといったのだ。
私は来る前からその人の事が気になって
いた。兄が通ってる高校は超が付く
ほどの進学校。どうせ兄と似たような
タイプか、勉強しかしてこなった様な
堅物だろうと想定した。ところが、
兄が連れて来たのは、笑顔が似合う、
とても爽やかな青年だった。

「圭輔の妹かぁ。佐伯幸太です。
 よろしくね」

一瞬だった…
何か言わなきゃと思ったが何を
言っていいのか全く思いつかない。
自然と出た言葉が

「好き…」

えっ!?えっ!?
私は何を言っているのか!?
自分の言ったことにびっくりした。
頭の中はパニックだ。

「華っ!?」

兄の発した言葉でハッとするも
何も言えず、ただアタフタしていると
幸太が笑顔で

「わぁー好きって言われちゃった。
 圭輔ごめんねぇ。華ちゃん、
 ありがとう。でも俺、好きな子が
 居るんだ」

その後の事はあまり覚えていない…
ただ、無意識に告白して、
一瞬で振られたのは確かだった。
このときは幸太も兄も私の告白が
本気だなんて思って居なかった
だろう。私自身、この感情が何年も
続くなんて思ってもいなかったの
だから。

出会いなんて、在り来り。
他の人から見たらきっとあの一瞬の
どこに好きになる要素があるんだ?
と言われるだろう。
ただ私にはあの人を寄せ付ける雰囲気、
屈託ない笑顔が眩しく輝いて見えたのだ。