「それよりも、早く作ろうよ」

 これ以上、この会話を続けられないっ!

 私はみんなに声をかけた。

「そうだね。ゆっくり食べる時間がなくなっちゃう」

 ほっ。よかった。

 卵を割って、チョコレートやバターを溶かし、それから、小麦粉をふるいにかけて…私たちは分担しながら、どんどん作業を進めていった。

 材料を全部まぜ合わせて、2つの四角い型に流し入れ、1つにはミックスナッツ、もう1つにドライフルーツを散りばめれば、後はオーブンで焼くだけだ。

 2つの型に入れ終えた時点で、材料が少し残った。

 恭子は何かひらめいたみたいに、『そうだ!』と言って、小ぶりなハートの形状の型を取り出してきた。

「玲奈、材料がちょうど1コ分残ってるから、せっかくだし、ハートのも作ったら?」

「えっ、そんな私だけなんて、いいよ。みんなだって、ハートのほしいでしょ?」

 私を除く3人は、お互いの顔を見合った。

「私は別に…ほしくないかな」

「私も、家族にあげるだけだし…」

「うん、私も」

 遠慮している風でもなく、本当にいらないみたい。