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《今日のご飯はハンバーグです!ちなみに、ひき肉がなかったので、先輩の嫌いなお豆腐で作りますね》


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……え、なんで?


講義を終えて、スマホを確認すると羽華から、朝の喧嘩を引きずるような嫌がらせの連絡が来ていた



………豆腐やだな


《楽しみ》と意地でも羽華に負けたくないので嘘の返信をした





大学っていったら、高校よりも大変なものだと思ってた


だけど、俺には合っていたらしく、特に長い授業を苦に感じることもなく、気付けば大学生活三年目を迎えていた


「え、湊って彼女いんの?」


隣に座っていた男


柏木 尚は、俺のスマホを覗き込むと驚いていて、目をかっぴらいていた


「うん、いる」


「えー何その顔、湊のデレ顔とか見たくねーんだけど……!」


明るい茶色の髪をかきあげた尚は、呆れたように笑った

俺が気にせずに立ち上がると、尚も同時に立ち上がり、一緒に歩き始めた


俺より少し高い身長の尚は、チャラチャラしてて、裕のことを思い出させる


そんな裕は経済学を学ぶため、どっかの大学に進学した


……たまに、俺の家に連絡も無しに居たりすることもある


自己中な奴に好かれる才能でもあるのかな、俺



「あ、おい、今失礼なこと考えただろー?」

「自己中だよね、尚って」

「おぅ、シンプルな悪口」


罵っても嬉しそうにニコニコ笑ってる尚は、昨日、三日前に出来た彼女と別れたと言っていた


そんな人に、自分の彼女の話をするのは気が引けた


………いや、定期的に彼女が代わるコイツに気を使ってたら俺の精神がすり減る


羽華のことを聞き出そうと抱き付いてくる尚をあしらっていると、また連絡が来た






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《苺タルトで交渉に応じますよ》




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苺タルト…………好きなのかな



苺タルトを頬張って、頬をピンクに染める羽華を想像してしまう




付き合って五年になるのに、まだまだ知らない事がある


その事に何だか心が暖まって、尚が近くにいることを忘れて、頬が緩んでしまった


それが失敗だった




「俺、苺タルトの美味しいお店知ってるよ?」


「………勝手に見ないでよ」


「気になるなー、湊の彼女ちゃん!しかも豆腐ハンバーグも気になるし!食べたいし!どーする?俺も彼女ちゃんとの対面で交渉に応じるけど?」



顎に指をあてて、ニヤリと笑う姿に腹が立つ


周りの女がキャーキャー騒いでいるのもムカつく



………俺、ケーキ屋さんとか行ったことない



「………会うだけだよ?見るだけだからな?」


「はいはい、おっし!行くぞーっ」



俺の肩に腕を回すと嬉しそうに声を張り上げた尚に不安を覚える



どうか暴走しませんように



羽華に友達を連れていくと連絡すると、すぐさま《了解、待ってます!!湊先輩、お友達いたんですね》と返ってきた



苺タルト、ちっちゃいのにしよ