いつからか、成人は十八才に引き下げられたらしい。つまり、試練を受ける年齢も十八才になったのだ。成人の箱と呼ばれる部屋に入り、私たちの街の十八才を迎えた人は、皆大人になるための通過儀礼を行う。
「ついに明日ね。レノ。」
「…うん。」
私の順番は明日だ。十八才を迎えて数日経った。大学受験も控えてはいるが、この儀式を避けて通ることは出来ない。成人の箱に居る期間はまちまちで、長くて丸一週間掛かった人もいるとかいないとか。
「どこに行けばいいんだっけ。」
母は届いたハガキに目を通しながら答えた。
「んー?えっとね、地区センターだってさ。」
「地区センター?そこが成人の箱なの?」
「ううん。」母は続ける。
「成人の箱の場所は、誰も知らないわ。」
「誰も?大人は皆、試練を受けに行ったことがあるんでしょ。」
「ええ。でも、知らないわ。記憶消されちゃうし。試練の内容も、覚えてないのよ。」
当然のように母は言った。
…って、じゃあ場所もやることも分からない状況で何日も閉じ込められに行かなきゃってこと?なんだか怖いな…
「そんなに不安がらなくても大丈夫よ。危ないことがあったなんて聞いたこともないし、レノならきっと、簡単に試練を突破できるわ。」
「やめてよ、余計プレッシャーなんだけど…」
そう言うと、母は笑った。