某日。"すずちゃんが好きだなぁ"なんて誰にも聞こえない告白を、心の中で呟いていた放課後。


「月島くんのこと、」


帰ろうとして下駄箱を開けたら「体育館裏で待ってます」とラブレターが入っていた。それも差出人不明のラブレター。

その字が彼女が書いたものではないと分かってはいたが、ずっと待っていられるのも何だか嫌な話。

気が乗らないまま体育館裏に足を向けると、そこで待っていたのは確か同じクラスの女子生徒だった。

名前は覚えていないけれど、多分フランスかどこかのハーフで男にも女にもチヤホヤされて嬉しそうにしていた人。


「ずっと前から好きでした!」


案の定呼び出された理由は「告白」だった。

彼女は顔を真っ赤にさせながら「付き合って下さい!」と愛の告白を述べる。

対して僕は自分でも分かるくらいに冷めた目をしていた。


(すずちゃん以外に「好き」って言われてもなぁ) 


もし、目の前にいるのがすずちゃんだったらな。想像出来ないほど程遠い未来に目眩すら覚える。


「・・・」
「あの、えっと、月島くん?」


自分で言うのもなんだが、僕は世間一般で言う“イケメン”に属するらしい。

イケメンの自覚はないが、モテている自覚はあった。

こうして呼び出されて告白、が日常茶飯事になったのは小学生から。中学生、高校生と年齢を増していくうちに、告白された回数は2の倍数で増えていっている。

その所為か、男にやっかみを買うこともしばしば。故に僕にはあまり友達がいない。