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 翌朝。律が登校すると、新條が校門で署名運動している。

 ――またやってる……。昨日だけだと思ってたのに。ここまでする奴だったなんて……。

 律は迂闊にも、涙腺が緩みそうになった。くっと堪える。

「こーんな早くから学校に来るなんて珍しー。ドラマの撮影サボったんじゃないでしょうねー」

 律が憎まれ口を叩くと、新條は振り返った。「あっ、先輩」
 律は新條が持っている署名用紙を何枚か奪い取る。「手伝う」

「えっ、先輩昨日は、変更になっていいって言ってたのに」

 ――ダイヤモンドガールで踊ることに不安はある。でも。

「私もこの曲好きだし、体育祭まであと一週間しかないのに曲を変更してたら、振り付けのクオリティが下がるだろうし」

 ――新條と考えた振り付けは自信作だ。中途半端なまま終わらせたら後悔する。

 言い訳するように言った律に、新條は「そうですね」と微笑んだ。

 登校してきたダンス係が、次々と署名運動に加わっていく。「そういうことなら協力するよ」「同じダンス係なんだから、手伝わせて」