音もなく背後から私たちを追い越した陽葵は、そのBARの扉を一切の遠慮なく開いた。ていうか陽葵居たのね…何も話さないから忘れかけてたよ。


涼くんは後から追ってくるそうだ、獅貴にバイクを盗られて足が無いものだから。ほんとこの男は傲慢というか自分勝手というか…。



つまりこの場に居るのは私、獅貴、陽葵の3人という、如何にも面倒臭そうな面々である。この二人どっちも我儘で我慢とか知らなそうだし、何かあったら私が全力で止めないと。




「じゅんちゃん、オムライスー」




字面だけ見たら完璧にお子様なんだよなぁ。たぶん陽葵はお子様ランチに付いてる日の丸の旗が好きなタイプの子供だ。


ぱたぱたと可愛らしい足音を響かせて中に入った陽葵は、カウンターに乗り上げて『じゅんちゃん』とやらを呼んだ。



ここのBARの店主は陽葵たちの知り合いなのかな。だったら閉まってるお店に入れても不思議じゃない。