「…ていうか、ANARCHYの先代総長って…。
獅貴の"先輩"ってそういう意味だったんですね…」
あぁ、と思考するように視線を上げた鴻上さんは、そういえばそんなこと言いましたね、と他人事のように笑う。そんなことで片付けていいほど単純な事案では無いのだが。
けどまぁ、獅貴たちの先輩だし、なんかふわふわしてる人だし、今更余り驚くことは無い。彼は初めから獅貴たちと同じ匂いがしていた。
この先輩にしてあの後輩達あり、か。中々の説得力である。
「と言っても、弱小で喧嘩も雑魚ですし、実質名ばかりの立場だったので。あまり恐縮せずに普通に接してくださいね」
普通に接してくださいね、と爽やかに言われても困る。弱小で雑魚の人間は男二人を蹴りで吹き飛ばしたりしない。
それにあの殺気と威圧感は異常だ。鴻上さんの前の代の総長さんは彼の実力を見抜いていたということだろうか。
だって普通に考えて『こいつ料理上手いやん、総長にしたろ』なんて思わない。思わない、よね…?ANARCHYの常識が理解出来ないから知らないけど。
「…それで、deliriumって結局何なんですか?」
話の内容を聞く限り、彼が私に伝えたい一番の話はそれだろう。ANARCHYは兎も角、deliriumなんて初めて聞いた。