街の中ではジングルベルがかき鳴らされ、緑と赤と白に彩られたこの季節。
 イタリアの国旗かよっ!と一人つっこみをしながら、お弁当をコンビニ買って、戻る道。今日は、先輩たちが本社に行ってしまって、一人でランチになってしまったので、コンビニ弁当を選択。
 悲しいかな、遼ちゃんは忙しい日々が続いていて、今年が終わるまでに会えるのかわからない、世の中の流れにのれない私。こんなに会えなくて、私たち本当に付き合ってるのかな? と、思うくらいには常識はあると思う。
 遼ちゃんの『信じて』にすがってはいるものの、たまにL〇NEで連絡とりあえうくらいじゃ、普通にファンで出待ちしてる子たちよりも会えていない気がして、私、ファン以下かも? と自虐的になってしまう。
 残念ながら、そんな思いは、顔にもにじみ出てるかもしれない。

「神崎さん」

 後ろから声をかけられた。振り向くと、本城さんの彼氏の坂本さんだった。

「これから、お昼?」

 私の手にしたコンビニの袋を見ながら、ニコニコと話しかけてくる。

「あ、はい。あれ? 坂本さん今日こっちに仕事ですか?」
「ん、ああ、ちょっとね。本城さん、いる?」
「えと、今は笠原さんと一緒に本社行ってます。」
「そうか……じゃあ、楢橋さんは?」
「今、お昼に出てます。」
「ん~、じゃあ、楢橋さんが戻るまで、待たせてもらおうかな」
「あ、はい」

 自分の席に戻ると、すでに楢橋さんは戻っていた。

「は、早いですね~!」
「んあ?」
「あ、坂本さんがお話あるみたいですよ」
「おう。久しぶり」

 ぺこりと頭を下げた坂本さんに、手で、打ち合わせスペースにつれていく楢原さん。あの組み合わせは珍しいなぁ、と思いながら私はお弁当を食べ始めた。

「戻りました~」

 本社から二人が戻るころには、坂本さんはもういなかった。

「さっきまで、坂本さん、来てました」

 ピクッと肩をふるわせた本城さん。私が二人の関係を知ってるのを知らないせいか、何も言わずに席に戻った。

「そうか。久しぶりに会いたかったなぁ」
「お元気そうでしたよ。楢原さんと、なんか打ち合わせしてましたけど」
「あ~、そうか~」

 そうか、そうか、と言いながら、笠原さんも仕事に戻った。ん? なんかあるのかな、と思ったら、その意味がわかるのは、次の日の朝。

「えー、坂本さん、異動なんですかー」

 社内ホームページで、年明けの異動の発表が行われた。昨日は、その挨拶に来てたようだった。

「本城さんたちは、知ってたんですか?」
「俺は知らなかったけど、昨日、わざわざうちに来てたってことは、なんかあるんだろうなぁ、とは思ったけどな。楢原さん、坂本の新人の時、よく面倒みてたから、挨拶にでも来てたんじゃねぇの……しかしまぁ、今までとは全然違う畑で営業じゃ、大変だなぁ」

 社内ホームページをじっくり読みながら、眉間にシワをよせる笠原さん。

「彼なら、大丈夫よ」

 俯きながらつぶやく本城さんの声には、確信している人特有の力強さがあった。坂本さんを信じてる、そういう顔だった。
 私はあんな風に遼ちゃんを信じられてるかな。
 ちょっと、心がチクっとした。