河村君が真摯だ。
 ずっと優しいのだ──

 いや、学生時代から、にこやかに声を掛けてくれる人だったし、元々気を遣ってくれる人だったけれど。なんだろう……
 甘い……といえば良いのか……

 こんなに世話を焼いてくれる友達──は、初めてなのだ。そもそも男友達なんてほぼいないし……

 うーん。

 河村君の研修期間が終わり、会う機会はぐっと減ったかと言われると、そうでもない。

 部署が違うけれど食堂は同じなので、顔を合わせれば挨拶をするし、まだ続けているらしい彼女設定で周りに紹介するものだから、曖昧に笑って誤魔化したりして、自然と仲は途切れない。
 
 帰りの時間が合えば一緒に帰る事もある。
 驚いた事に最寄り駅が同じと知った時は大分バツが悪そうにしていたけれど、「この辺家賃安いもんねえ」と同意すれば、「それだけ?」と目を丸くされたのをよく覚えている。

 そんな河村くんの表情を窺えば、安堵した後、物足りないような、不安げな顔をしていたのは……何でだかよく分からなかった。