顔に薄く化粧をほどこしたルルは、ドレッサーに向かって髪を梳いていた。
 晴れ着である婚礼衣装を身につけたせいか、しゃんと背が伸びている。

 鏡に映る大人びた自分は、お気に入りの毛布にくるまってお昼寝しているときとは別人みたいだ。

 花の種からとれるオイルで整えた銀髪は、ダイヤモンドのようにつやめく。
 黄色やピンクや水色をふくんで乱反射する輝きは、ルルをまっとうな王族であるかのように見せた。

(実際は、魔力がこれっぽっちもないダメ王族なんだけど)

「ルルーティカ様。ベールをお持ちしまし、た……」
「ノア、入ってくるときはノックしてって言ってるじゃない」

 体を反転させると、ノアがこちらを見たまま固まっている。

「どうしたの?」
「いえ、その……」

 ノアは、手で口元をおおって視線を下げた。

「ルルーティカ様が、お綺麗だったものですから」