「――はっ」

 ルルが目を覚ますと、部屋はぼんやり明るかった。
 分厚いカーテンの端から、太陽の光がさし込んでいる。

 ここは(元)聖騎士ノワール・キルケシュタインに連れ込まれたお屋敷だ。

 毛布を肩にかけてベッドを下りる。
 祈りの部屋の十倍はあろうかという広さの部屋に、ノアの姿はない。眠りに落ちる前は、あんなに力強く抱きしめてくれたのに。

「守るって言ったくせに」

 ぐちぐち言いながらカーテンを開くと、ランプの明かりがふっと消えた。
 魔力で点いたり消えたりするようだ。

 窓の外――お屋敷の裏手には広い草原が広がっている。
 建物は一軒もなく、人通りもない。これなら窓を塞いでおかなくても、ルルが姿を見られる心配はないだろう。