夜は久しぶりに優那とご飯。
もうちょっとオシャレしてくるんだった、と待ち合わせ場所に現れた優那を見て思う。

大手製薬会社に就職して忙しい毎日を送ってるというのに、なんて綺麗なんだろう。

そりゃイケメンで優しい恋人と仲が良いわけだ。

優那が予約してくれていたエスニック料理屋に入る。
馴染みのないラベルのビール瓶が2本、目の前に置かれる。

「環、どう?研究室」

乾杯して一言目に聞いてきた。

「最近、メダカ大量に飼い始めた」

私がそう言うと、優那が笑った。

「そういうんじゃなくて」
「それ以外?」

あの地味で薄暗い研究室を頭に思い浮かべる。

基本メスばかりのミジンコが、理仁の趣味で最近はオスばっかり生まれてくる。
なかなか残酷な趣味だ。

「理仁が趣味でオスのミジンコたくさん作るようになった」

私の報告に、優那は「え?」と笑う。

「久しぶりに理仁の話が出てきたから、何か進展があったのかと思ったらミジンコ」

ビールを口に含んでもう少し考えてみる。
理仁からミジンコ以外の話題は出てこない。

「何かないの?」
「何かって」
「環、もう25だよ?」

優那のバッチリとした瞳が私を見る。
何度見ても美人だ。
大学一年、同じ授業で隣の席になった時にあまりの美しさに二度見した。

男ばかりの環境で勉強してきたから、工学部にこんな美人がいるとは思わなかった。

隣の席ということもあって、優那はすぐ仲良くしてくれた。
けど、私の遥か上をいく頭の良さ、美しさで、1年の頃から院を卒業した今も学部内のマドンナだ。

私は見事にずっと引き立て役をやってきた。