水質汚濁調査のフィールドワーク。
少し離れた山の中にある沼に研究室全体で集まった。

全員汚れてもいい防水サロペットに着替える。

悲しい。
なんでこんな格好。

理仁はこんなダサい格好でもカッコよく見える。
顔面が整ってるって得だ。

教授から説明を受ける。

環境とミジンコの関係性。
班ごとに沼の範囲に分かれて、水を収集してくること。
ドクター(博士)はマスター(修士)の管理、補助をすること。

私と理仁は、一緒に行動することになった。

班ごとに分かれたマスターの集団に混ざって沼の周りを歩く。

「俺、こういうのワクワクする」

足場の悪い道を歩きながら、理仁が振り返る。

「私も研究室にこもるより、こっちの方が好きだな」

木と木の隙間から漏れると書いて木漏れ日。
すごく好き。

後輩たちがズンズンと進む中、理仁と私はマイペースに歩く。

「ねえ、告白の返事、もうしたの?」

足元を見ながら聞いてみた。
理仁が少し驚いた表情になる。

「なんでそれ知ってんの」
「研究室に戻る時に偶然聞いた」

理仁が「そっか」と視線を落とす。

少しずつ目的地に近づいてきた。
先頭を歩く子が道を曲がる。

「まだだけど」

そう言う理仁と目が合った。

早く、結論を出してほしい。
でもそれを部外者の私が言うことじゃない。

「まだ、よく分からないから、結論が出ない」

そう言ってまた視線を前に向ける。

なんで。
なんでそんなに悩むの?

好きか嫌いか、すぐ分かるじゃん。