研究室に院生10人。
皆黙々と論文を打ち込み続けて早8時間。
朝9時頃から来て、もう17時だ。
会話がほぼない。
「ねえ」と小声で隣の理仁に話しかける。
少し面倒そうにイヤホンを取って「ん?」と言ってきた。
「明日来てやってもいいよね、これ」
そう言うと、理仁がカレンダーに目を向ける。
「明日、研究棟開かないよ」
「えっ、なんで」
私もカレンダーを見て気付く。
赤い丸が土日の二日間に付いてる。
そして赤く書かれた「学祭」の二文字。
「そっか、明日学祭か」
サークルも入ってないし、学祭に出店するゼミでもないし、ずっと無縁な存在だった。
気付けば1年の時に行ったのが最後だ。
なるほど、研究棟が開かないから、みんな焦ったように論文を書いてるのか。
私も書かなきゃ。
そう落ち込んでいると、トントンと理仁から膝をつつかれる。
「行ったことある?」
小声で言ってきた。
「大学1年の時ちょっとだけ」
そう答えると、無意識に目が合う。
理仁の方が先に口を開いた。
「行ってみる?明日」
耳を疑った。
25年にして、人生初「好きな人からのお誘い」。
「うん」
なるべく嬉しさを表情に出さないように努める。
どうしよう、長すぎる学生生活も無駄じゃなかった。
まさか、大学生活7年目にして、好きな人から学祭に誘われるとは。
「よし、じゃあもうちょっと頑張ろ」
そう言って理仁がまたイヤホンを付けた。
皆黙々と論文を打ち込み続けて早8時間。
朝9時頃から来て、もう17時だ。
会話がほぼない。
「ねえ」と小声で隣の理仁に話しかける。
少し面倒そうにイヤホンを取って「ん?」と言ってきた。
「明日来てやってもいいよね、これ」
そう言うと、理仁がカレンダーに目を向ける。
「明日、研究棟開かないよ」
「えっ、なんで」
私もカレンダーを見て気付く。
赤い丸が土日の二日間に付いてる。
そして赤く書かれた「学祭」の二文字。
「そっか、明日学祭か」
サークルも入ってないし、学祭に出店するゼミでもないし、ずっと無縁な存在だった。
気付けば1年の時に行ったのが最後だ。
なるほど、研究棟が開かないから、みんな焦ったように論文を書いてるのか。
私も書かなきゃ。
そう落ち込んでいると、トントンと理仁から膝をつつかれる。
「行ったことある?」
小声で言ってきた。
「大学1年の時ちょっとだけ」
そう答えると、無意識に目が合う。
理仁の方が先に口を開いた。
「行ってみる?明日」
耳を疑った。
25年にして、人生初「好きな人からのお誘い」。
「うん」
なるべく嬉しさを表情に出さないように努める。
どうしよう、長すぎる学生生活も無駄じゃなかった。
まさか、大学生活7年目にして、好きな人から学祭に誘われるとは。
「よし、じゃあもうちょっと頑張ろ」
そう言って理仁がまたイヤホンを付けた。