うわ、時間に遅れそう。
部屋にかけてある時計を確認しながら私は慌てて玄関へと向かう。


深夜に『愛の戦士ドリームパイン』やってたし、仕方ないよな。
急がないと。


急いでヒール靴に足を入れて、私は玄関を飛び出す。
その時、丁度チャイムが鳴った様な気がした。


ガンッ!っと何か扉に当たった音がした。とってもいい音。
それと一緒に

「ぶぎっ!」

っと、うめき声。


……がん? ぶぎ?



何事? 私は恐る恐る扉の先を覗き込む。
そこには黒ぶちメガネをかけた男の人が立っていた。


その人は鼻を抑え込んでいる。
犯人は多分、ってか、絶対に私。


「はっ!? す、す、すみません‼」


慌てて謝ると、彼はははっと空笑いしながら大丈夫を繰り返した。


「え、と。うちに何か御用ですか?」


家の玄関前に立ってたんだ。何か用があったんだよね?
私は首を傾げながら尋ねる。


「あ、すみません。隣に引っ越してきた山本です。つまんない物ですが…」

「わざわざすみません。私は安西です。
って、すみません! 時間なくて! ありがとうございます。本当にすみません」


私は彼から粗品を受け取ると、鍵を慌ててしめる。
それから彼に会釈して、ダッシュで階段を駆け降りた。