顔をしわくちゃにしながら涙を流す綾乃に悟は「なぁ、抱きしめていい?」と尋ねる。

小さな体を震わせて涙を流す綾乃を抱きしめたくて、もどかしくさえ感じた。

本当はすぐにでもタクシーから降りた綾乃を抱きしめたかった。

強く強く抱きしめたかった。

そのぬくもりをすぐに感じたかった。

ほんの少し残されている理性に悟は綾乃に思わず聞いていた。



悟の言葉に一瞬体の動きを止めた綾乃。
でも次の瞬間、両手を悟に向けて広げる。