――だから、ねえ、きょうちゃん。
わたし、淋しかったんだよ。

初めて手紙を送り合ってから四半世紀が経った。
漫画家どころかイラストに関わる仕事にすら就けず、一般企業の総務係になったわたしと違い、抜群のファッションセンスを活かして新進気鋭のデザイナーになった鏡子は今、ミラノを拠点に活動している。
日本へは数年に一度しか帰ってこない。

国際電話がつながらず、メールで結婚の予定を知らせたところ、返信もないまま数週間後に国際便が届いた。
送り状にも箱の中にも彼女の肉筆はどこにもなく、オンラインショップで注文されたのであろう高そうなワインだけが梱包材の中から現れたとき、わたしは泣きだしそうになった。

違う。
これは、おたのしみ便じゃない。
Chateau(シャトー)……、ねえ、読めないよ。
そもそもわたし、お酒なんか飲めないよ。忘れちゃったの?