ケータイ小説 野いちご

精霊たちのメサイア

アガルタ王国
6.適正

6.適正


馬車に揺られて向かうのは街の教会。本来ならば16歳の誕生日に行くらしいけど、私はその日はまだ日本にいた。

先日年齢の話になって16だと伝えると、両親と使用人たちはみんな驚いた顔をして慌て始めた。海外で日本人の容姿は幼く見えるというが、どうやらこの国でも同じ事が言える様だ。両親は私のことを12歳くらいだと思っていたらしい。

教会に着くと、白地のローブを着た男性が出迎えてくれた。


「ヴァレリー様、お待ちしておりました」


通路を歩きながら少し緊張した。小さい頃聖歌隊に入っていたから教会にはよく行っていた。それなのにいる人達の雰囲気が違うせいか妙に落ち着かなかった。


「安心して、レイラと同じ歳の子たちがいるでしょうから、大丈夫よ」


お母様は安心させる様に私の手を握ってくれた。

ヴァレリー家のみんなはとっても暖かい。お兄様方も歳が離れているせいなのか、ぎこちなさはありながらも、私のことを気遣ってくれた。グレゴワール兄様は最初から気さくな人だったけど。


「こちらの待合室でお待ちください。 順番が参りましたら呼びに参ります」


案内された待合室には私の様に両親に付き添われた人たちが数人いた。不安そうな顔をしている人もいれば、期待に満ちた顔をしている人もいる。


「レイラの属性はなんだろうね」

(お父様は?)


そう文字を書いた。まだ簡単な文字しか書けない。それでも出会った頃よりも会話はスムーズになった。


「私は炎の属性だよ」

(お母様は?)

「私は水の属性よ」


私はなんだろう。生活に役立つ様な属性がいいな。土とか水だったらお母様のお手伝いでお花のお手入れができるんじゃないかな。お父様と同じ炎のだと私には使い勝手が悪いかもしれない。そもそも魔法のない環境で育ったから、私に適性があるかも分からない。

教会の人に呼ばれ立ち上がると、お父様に手を包み込む様に握られた。


「ここで待っているから、安心して行っておいで」


笑って頷き、教会の人の後ろについて行った。

案内された部屋の中心には魔法陣の様な円が描かれている。本当にファンタジーの世界にやってきたと改めて思わされる部屋だ。そしてたくさんの大きな像に囲まれている。みんなこの世界の神様だろうか。


「円の中心までいって、お祈りをする時の様に手を組み目を瞑ってください」


コクリと頷き円の真ん中まで歩いた。言われた通りにすると、なんだか身体が温かくなった。


「ようやく会えましたね」


声がして慌てて目を開けると、真っ白な空間にいた。目の前には目を見張るほど美しい女の人が立っている。


(貴女は……)

「私はこの世界の神の1人、ベアトリス。 貴女をこの世界へ連れてきた神の1人でもあります」

(私を連れてきてくれてありがとうございます)

「こちらの世界で不自由はありませんか?」

(とても良くしてもらってます)

「それは良かったわ。 アルファリードの加護をもらっているようだけど、私からもお詫びとして加護を授けましょう」


ベアトリス様は手に持っていた杖を伸ばし、私の頭の上で止めた。すると身体が微かに光った。


「貴女は光属性です。 通常であれば怪我の治癒のみですが、解毒もできるよう力を加えておきました。 役に立つ日がくるでしょう」

(ありがとうございます)


そう言いながらも、解毒しなきゃいけないような状況にはなってほしくないと思ってしまった。


「もう戻りなさい。 ヴァレリー夫妻が待っています」


ふわっと眠気に似た感覚に襲われる。次に目を開けると、お祈りする部屋に戻っていた。まるで夢でも見ていたみたい。


「レイラ様」


名前を呼ばれて振り返ると、ローブを着た人たちが片膝をつき祈る様な体制をしていた。1人だけ立っていて目が合うと、丁寧にお辞儀をした。私も慌ててお辞儀した。


(どういう状況!?)


「私はフェニーニと申します」


(……なんか偉い感じの人だけど、こんな人が私に何のようだろう)


「神のお告げを受け、ご挨拶に参りました」


(お告げ……?)


首を傾げると、フェニーニさんは微笑んだ。


「貴女様はこの国の光となるであろう…と、そして貴女様が平穏な暮らしを送れる様に見守る様にとお告げを頂きました」


(ベアトリス様ってば、そんなことまでしてくれたの!?)


ありがたい様な、ありがた迷惑のような……なんとも微妙な気持ちになった。


「貴女様に何か起こらない限り、我ら教団は貴女様の人生に介入するつもりはございません。 ただもしも可能でしたら、お時間がある時にはお祈りに来て頂けませんか? レイラ様の様に光の力が強い方の祈りは、教会に来ている者たちの癒しとなりますので」


頷くと深いお辞儀をされ慌てた。

フェニーニさんが待合室まで送ってくれたのはいいが、お父様もお母様もとっても驚いていた。どうやらフェニーニさんは枢機卿といって、とても偉い立場の方らしい。

馬車までの見送りがてら、フェニーニさんはお告げがあった事を両親にも説明していた。2人は話を聞きながら複雑な表情を浮かべていた。どうしてそんな顔をしたのか聞きたかったけど、聞けるほどの語学力がない。この世界に来てからは話せない事を後悔してばかりだ。





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