早寝をしたはずなのに目を覚ましたのは10時前。
準備に時間のかかる私なのに、まさか待ち合わせの2時間前に起きるなんて。
あの早寝は何だったのかと思う。
急いでベッドから抜け出してクローゼットを開き、着ていく服を探す。
『あーもう、これでいいや』
型が出る水色のトップスと白のスキニーパンツを選んだ。
洗面所に行き、顔を洗って歯磨きとメイクを済まし、胸まで伸びた茶色い髪をコテで巻いて崩れないようにスプレーをかける。
『よし、おっけい』
急いで準備を終えてクラッチバックにケータイ、財布、メイク直しのための道具を持って家を出ようとした。
その時タイミングよくお母さんが外から帰ってきた。
上から下まで私を見て「やっぱ遅起き」と言ってきてその言葉は余計だと思う。
「出かける」と告げ、母さんの横を通ると「デートか~?」と冷やかされながら見送られた。
約束の12時前に待ち合わせの駅に着くと誠人はすでに来ていて何かを寄せ付けていた。
4人の女の子に囲まれて何なのさ。
私とデートだってのに可愛い子たちに囲まれてデレデレしちゃってさ。
実際そんなことなくて、私がそう見えるだけなんだけど。
ムッとして大股で近づくと、誠人はようやく私に気づき「沙夜」と先輩抜きで名前を呼呼んで、囲んでいた女の子たちの間を割って私のところにきた。
女の子たちの目は「何この女」「彼女かよ」と嫉妬の目を向けていた。
『囲まれて楽しそうだったね』
「は?俺誘いを断ってたんだけど?中々離れていかなかったんだよ」
嘘だ。笑顔ふりまいてたじゃん。
『嘘』
「ほらよ。コイツが俺の女、だから遊べねぇの」
言おうとした言葉をワザとか何なのか、遮って自分の言葉を口にし、女の子たちにそう言った。
しかも私の肩を抱いて…額にキスを落としてまで…。
でも私を好きでやったんじゃないって分かってる。
女の子たちに見せつけるためだけのもの。
これは女の子たちを追い払うためのもの。
だから心がすごく苦しくて痛い。