誰、なんて言えなかった。先ほどスマホのグループチャットで、その名前は見たことがあったから。
名木田が一緒に行動していた人なのか。はぐれてしまったのか。
そんなことをぼやっと考えている私とは反対に、凛上は黙って、なにかを悟ったように深刻な表情をしていた。
だけどやがて、決意したように口を開いて。
「そこ」
凛上が指差したのは【staff only】の部屋。
一人の男子生徒が鬼に引きずられていって、今も中にいる場所。その瞬間、
「鬼が連れていった。たぶん」
指を指しながら呟いた凛上の声が震えていた。
イツキという名前と運ばれていった男子生徒が、私のなかで静かに結び付くのが分かった。