君島 快斗×小川 皐月×伊藤 千奈実
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白、橙、桃、青、黄、赤、紫、緑


わー綺麗。

そう思う程には、この症状に慣れていた。

嘔吐中枢花被性疾患、通称、『花吐き病』。
片想いをこじらせることによって花を吐いてしまう病気である。

吐いた花の花言葉が今の自分の気持ちを表していると言われ、現に私の目の前には数本のチューリップが皮肉にも綺麗に落ちている。
特に黄色のこれの花言葉は『望みのない愛』。
笑ってしまう程の、見事な失恋だ。

でも、今更それに失望することはない。
ずっとずっと前から知っていたこと。
彼と__快斗くんと一緒にいられるなんて、思いすらもしていないから。

それでも快斗くんのことを諦めきれていない自分に嫌気がさす。
それを皮肉なほど綺麗に咲いているチューリップがありありと示しているようで、思わず私は目の前の花たちをぐしゃりと握った。
そんな自分が惨めで今にも涙がこぼれてきそう。


「……っ、はぁ、」


でもそんなことになれば更に自分が惨めになるから。
快斗くんが似合ってるね、と言ってくれた白いワンピースの袖を伸ばしてぎゅっと目頭を抑えた。