5話「死人のぬくもり」



 自分でもわかる。
 顔が硬直して上手く笑えていない。
 どうしてわかった?
 祖母が話したのだろうか。それしかない。
 知られてしまった。両親の秘密を。

 文月は動揺し、咄嗟に桜門から視線を外しうつ向いてしまう。
 桜の木の下の、ピンク色の花びらの絨毯が目にはいる。普段なら綺麗だと思うだろうが、今はそんな事を思う余裕がなかった。


 「そんなに動揺しなくてもいい。みき子は詳しく教えてくれなかったからな。俺が調べた」
 「え………」
 「願い事を叶える時は多少は俺も気になったものは調べる。みき子の家族についても何のことかわからなくてな」
 「………」


 何を言えば良いのかわからなくなってしまった文月は、桜門の方を見た。
 けれど、そこには変わらない笑みがあるだけだ。どうして、彼はそんなにも笑顔でいられるのだろうか。


 「文月の病気は難病だっただろ。幼い頃から治療を受けてきた。だから、えっと……インタ………何とかで募金を集めてたんだろ?」
 「……インターネットでクラウドファンディング、ですね」
 「そう、それだ」


 文月がすぐに桜門の言いたい言葉を察知して、正しい言葉を伝えると、彼は嬉しそうに文月を呼び指して、そう言った。
 そこ後、横文字か難しいのか、言いにくそうに何度が練習する桜門の姿が、何だか微笑ましくなってしまい、思わず口元が緩む。