「蓮」


「・・・」


「蓮」


「・・・」


「蓮」


「・・・っ、んんんんんっ」


息が苦しくなって目が覚めたら
睫毛が触れそうな位置に大ちゃんの目があって

それより


「・・・んっ・・・ぁ、んっ」


息苦しさの原因のキスに
身体中から力が抜けた


「おはよう」


「・・・苦し、かった」


「だって、寝る前に“大ちゃん”って
三回も呼んだから、お仕置きだろ?」


「・・・・・・」


お仕置きって言われたら
やっぱり返す言葉がなくて


でも・・・


「あのね?」


「ん?」


「伝えたいことがあるんだけど」


「なに?」


「え、と、ちょっと離れる?」


ベッドの上でガッチリとホールドされている身体は全く動かせない


「なんで?」


「なんでって・・・」


「蓮は俺と離れたいの?」


大ちゃんはズルい


「・・・そんなこと、言ってない」


「じゃあ、このままでいいね」


「・・・・・・うん」


結局、甘い声の大ちゃんに丸め込まれて
息のかかる距離のまま話をすることになった


「背中大丈夫?痛くない?」


「うん、痛くないよ」


「じゃあ、よかった」


大ちゃんがニッコリ笑うから
これで良いんだって流されちゃう


笑ってるのに有無を言わせない感じがあるの

大ちゃんって本当不思議


「で、伝えたいことって?」


「あ、ごめんね、それは・・・」


「うん」


「私にとって『大ちゃん』って呼び方は
ずっとずっと前から私だけに許された特別だったの」


「そうだね」


「会えない六年間だって、ずっと
大ちゃんのこと思ってたから」


「ありがとう」


「だからね、やっぱり
“大ちゃん”って呼びたいの
違う呼び方するなら、それは
“ちゃん付け”の特別じゃない気がするから」


「ゔぅ」


唸るように黙ってしまった大ちゃんの顔を見ながら返事を待った