06 罪深い人。




運命のチケット。捨てる事も出来ぬまま、この日を迎えてしまった。

それは2月の始まり。奏から手渡された芹沢花音のライブチケット。開幕は18時から。

’行かない’と心の中で決めていた。その日は偶然仕事も休みだったが、そんな日は夕ご飯を作って駿くんの帰りを待つのが日課。せっかくの休みだから、手の込んだ料理を作ろう。

18時開幕のライブに行ってる暇はない。 だけど神様は時に運命の悪戯をしたがるものだ。

「いやぁ…突然参ったよ」

ライブが開催される前日。珍しく駿くんが夜遅くまで会社から帰って来なかった。トラブルがあった。とメッセージを一通送って着て、帰宅した駿くんは疲れた顔をしていた。

何でも取引先の大阪の工場とトラブルがあったらしく、それは駿くんの直接的なミスではなかったけれど謝罪しに会社に出向かないといけない、という事だった。

そしてその日の午前中、駿くんは泊りで大阪まで1泊の出張をする事になってしまったのだ。
…何でこんなタイミングで…。

「忘れ物はない?」

「うん。大丈夫。けれど参ったなぁ。」

「でも駿くんのせいではないんでしょう?」

「でも最終確認を怠った自分が悪いよ。寧ろ会社の人が責任を感じちゃって可哀想だ」