07 あなたではない人の涙。




「すっごい良かった…!」

「音源で聴くより生の方が良いって歌手も珍しいよな」

「そうそう。テクニック云々の前に人の心に響きやすい表現をするよね。
やっぱり…芹沢花音良い…。」

「きっと笑真なら芹沢花音の世界観が好きだと思った。」

芹沢花音のライブは想像していたよりもずっと良かった。
音源で聴いていても好きな感じであるとはずっと思っていたけれど、生は圧巻だった。

そこまで大きくない箱のライブハウスって言うのもまた良かった。あの子は将来必ず、大きな会場で沢山の人を魅了する歌い手になるだろう。

そして現在。都内の大衆居酒屋で、何故か奏と向き合っている。

しかも何だかんだ楽しく話してしまっている。 お酒を飲むのも久しぶり。ライブで汗をかいたせいもあるのだろうか。生ビールがいつもよりやけに美味しく感じる。

「ほい、笑真。塩辛とエイヒレときゅうりの漬物」

「あ。どうも。」