第三章 青のプロポーズ。




それから祖父の病院には週に数回お見舞いに行った。
気が付けばもう12月中旬だ。 

「それでだなぁ、あゆなは魚が大嫌いだった。野菜も殆ど食べない子だった。」

「へぇー…」

「かといって肉が好きな訳ではなく、小さい頃この子は本当に大きくなるのかと心配したものだ」

「あー…」

病室で私と話をする祖父は、顔色が良かった。余命宣告がされたとは思えない程に。 それでも漠然とこの人はいつか死ぬのだともどこかで思っていた。

人はいつか死ぬ。 誰だってそうだ。 私だって明日の保証なんかない。そんな不確かな毎日を私達は生きているのだ。

「魚を食べるのは苦手だったが、魚を見るのは好きだった」

懐かしそうに眼を細めた祖父は、自分の両手を見つめていた。
たまに私に視線を移すと、それは懐かしそうに愛おしそうに見つめる。

魚を見るのが好きだったという母と、智樹さんの接点は未だに見つけられずに居る。 けれど朔夜さんの言ってた言葉は嘘には感じられなかった。

「あ、じゃあ私そろそろ帰りますね」

「まりあ…また来てくれるか?」