第七章 愛なき執着。




祖父の病院に行き、自分の正直な想いを告げた。

横屋敷グループの権利と遺産は放棄したい、と。その全てを智樹さんに譲って欲しいと告げた。

祖父は最後まで渋い顔をしていたけれど、納得はしてくれたみたいだ。 弱々しい表情を見せて、いつものように私の手をぎゅっと握る。

きっと私と母を重ねているに違いない。 朔夜さんは最後まで祖父の病室に顔は出さなかった。


「春太さんには、感謝している。
どこの誰かも知らねーよーなガキを引き取って、何不自由のない暮らしをさせてくれた。
そんな中自分の好きな仕事が出来ているのは、春太さんの…横屋敷グループの後ろ盾があってからこそだ。」

朔夜さんの言葉に戸惑う。
でも私の不安なんて、全てを見透かすようなこの人の前ではお見通しだったのかもしれない。


何もない部屋。寂しい程シンプルな色のない部屋。 ここを訪ねるのは二度目だった。 家にはいれてくれたけれど、朔夜さんは私へ指一本触れやしなかった。

少しだけ開いた隙間を、私達はどうしても埋められなかった。 その理由は訊かなくても何となく想像が着いた。朔夜さんはきっと気が付いている。私と智樹さんの間に起こった事を。

何も言わないだけで、きっと知っている。