ケータイ小説 野いちご


「ただいま」

私の一言の後に響くのはガチャッと閉じるドアの音のみ。
背負っていたリュックを机の側に放り投げ、手をぷらぷらとさせながら洗面所へと向かう。

「おかえり」と最後に返ってきたのはいつだっただろうか。
3年前あたり……
いやいや、流石にそれより後には…

あぁ、記憶にないや。



昔から共働きの両親。
基本家におらず、いたとしても部屋から一切出てこない大学生の兄。

そして、普通の女子高生の私。

家に帰ってきても人がいるのは稀で。
両親はいつも夜中に帰って朝に出る。
顔を合わせるのも30秒あるかないか。
だが、この家族に生まれて、良かったとも悪かったとも思わなかった。
そして、これからも思わないだろう。


ただ、「おかえり」って言われたかなぁって思っただけだから。


なんとも言えないもやもやが私を取り巻くのが気持ち悪くて、洗った手をガシガシとタオルで拭いた。

次に向かうのはキッチン。
黒い冷蔵庫を開いて親のご飯の余り物を頂戴する。

あー…今日は良いのがない。
適当に白米と肉が入っていそうな炒め物を手にとって、レンジへ放り込む。
あとは、チンッという軽快な音が響くのを待つだけだ。

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