『結姉、さっきはごめん…』


『あっ、颯君』


部屋に戻ってた颯君が、2階から降りてきた。


『…目が赤い…結姉、泣いてた?』


『な、何でもないよ。大丈夫』


私は後ろを向いて目を拭った。


『もしかして祥太君と一緒だった?今、階段で会ったから』


『…あ、うん。祥太君がピアノを弾いてくれて』


『ふ~ん、それで感動したんだ。ズルいよな、祥太君は』


不機嫌そうな顔で颯君が言った。


『どうして?』


『…ピアノはさ、弾いてすぐに相手に思いを伝えられる。でも、絵は…そういうわけにはいかない』


『そうかな…ピアノも絵も、私はどっちも素敵だと思ってるよ。颯君の絵も、一筆一筆に思いがこもってるんだよね』


また、少し黙る颯君。


『…結姉、今からモデル頼める?』


『えっ、今から?』


『うん』


ほんの少しだけ悩んだけど、でも、私はうなづいた。


だって、颯君の表情からとても真剣な思いが伝わってきたから。


今は、断っちゃいけない気がした。


2人でゆっくり階段を上がり、颯君の部屋に向かった。


10畳ほどある少し広めの部屋。