Side 藤光莉愛




テストは無事終わって本当によかった。

もうすぐ夏休み、という放課後。


仁胡ちゃんに差し出されたポッキーを食べながら、
窓際にふたりで並んで、外を眺めていた。


「爽斗くん、今日はこないのかなぁ」


「……、え? なんで爽斗くん?」


「だって莉愛ちん、爽斗くんがくるの待ってるんでしょ?」


「待ってなんかないよ……!」


「ねー前から思ってたんだけど、なんで爽斗くんのこと好きって認めないの?」


……!
なんで逆に、ばれているんだろう……!


あたし、そんなこと一言も言ってなかったと思うんだけどな。


「わたしには隠したいってこと?」


しょぼんと表情が陰って、大きなため息が聞こえた。
がくっと俯いてしまった仁胡ちゃんを見て、動揺しながら首を横に振る。


「ちがうよ……! そうじゃないから!」


仁胡ちゃんの耳もとに手をそえて、そっと小さな声でささやいた。



「だってあたしが爽斗くんを好きだなんて身の程知らずにもほどがあるでしょ……?」


すると仁胡ちゃんは顔を上げて、にやーっと笑った。


……あれ? 

さっきまでの落ち込んだ姿は……?


「やーっとみとめたかー!」


ぽきっとポッキーを口に入れて笑う仁胡ちゃんをみて演技だったってようやく気づいた。



「あ……」


思わず口に手を当てる。
爽斗くんを好きだなんて誰にも言ったことがないのに……!


……だって身の丈に合わない相手に恋なんて、恥ずかしい。