「で、今日はどこへ帰るんだ?」

お兄ちゃんが居なくなった途端、徹さんの目つきが変わった。

「え?」

「まさか、ネットカフェ?」
「いいえ」
さすがに、それでは体が休まらない。

「アパートに帰る?」
「いや・・・」
きっと取り立てが来るだろうから、アパートには帰れない。

「じゃあどうするんだ?」
「それは・・・」

やだな、この流れ。
私が劣勢。

この状況で「医局の仮眠室に泊るつもり」なんて言えば、許してくれるだろうか?
絶対反対されるよね。

「送ってもらわなくても1人で帰りま」
「ダメ。陣にも送っていくって約束したし」

まあ、そうなんだけれど。
ウゥーン、困った。

「昨日のこと、陣にバラそうか?」
「ダメ、待って」

私は、徹さんの手に握られた携帯を掴んだ。

お兄ちゃんは過保護なんだから、大騒ぎして病院に連れて行きそうだし、部屋だってすぐに引っ越ししろって言うに決まっている。
今の私にはそんな暇はないのに。

「どうする?」
冷ややかな視線で、私を見る徹さん。

この人、お兄ちゃんに負けないくらいイジワルだわ。
ちょっと、苦手かも・・・