上を見ても真っ暗。
左右を見ても真っ暗。
下を見ても真っ暗。

行き場のない場所でただ1人彷徨う中。
目の前に突然お母さんが現れた。


「お母……さん?」

「そうよ。由乃」

「お母さん……どうして私とお父さんの前から姿を消したの?」

「ごめんね。でももう大丈夫よ。これからは由乃とお父さんのそばにいるわ」

「ほんと?」


頷くお母さんは、両手を広げて優しく微笑む。

それに応える私は、お母さんの元へかけ走る。
だけど、いきなり脚が冷たくなった。
まるで真冬の海にいるかのよう。

下を見ると、そこは真っ赤な血の海。

どんどんと海底に沈められる体。
怖くて、お母さんに助けを求めても、もうすでにそこには、お母さんの姿は無かった。


「お母さん!!どこ行ったの!?お母さん!助けてお母さん!!」


そばにいるって言ったばかりじゃん!

どんなに這い上がろうとしても身体はどんどんと冷えていく。




「おかっ!!………」


"お母さん"と叫ぶ前に、夢は終わった。